こんにちは。沖縄でRC(鉄筋コンクリート)建物の設計をしている、大城です。
前回の記事で、「コスパ最強の家とは、安く建てる家ではなく、一生涯のコストが少ない家のことです」というお話をしました。実はこの考え方を突き詰めていくと、もうひとつ大事な結論にたどり着きます。それが、今日のテーマです。
これまで何十件、何百件もの住宅を手がけてきた建築士の多くが、口をそろえてこう言います。
「家は、造りすぎないほうがいい」
家を建てるとき、「あれもほしい」「これもあったら便利そう」と、どんどん理想が膨らんでいくのは自然なことです。でも、プロの目線で見ると、実は「足す」よりも「足さない」ほうが、あとで得をすることが多いのです。
今日は、多くの人が「あったほうがいい」と思いがちな5つのものを例に、なぜプロが「造りすぎない」を選ぶのか、できるだけわかりやすくお話しします。
収納は多ければ多いほど良い、は本当か
「収納は多いほうが安心」——そう思う人は多いはずです。でも、これは半分正解で、半分は間違いです。
収納スペースが増えると、そこに物をしまえるようになります。しまえると、なんとなく物を減らさなくなります。結果として、使わない物がどんどん増えていくのです。
そして、収納をたくさん造るということは、その分だけ家の床面積が増えるということです。床面積が増えれば、当然、建築コストも上がります。使わない物のために、余分なお金を払っていることになるのです。
デザインは「かっこいい」だけで選んでいいのか
インスタグラムなどで、おしゃれな家の写真を見て「こんな家に住みたい」と思うことは、誰にでもあると思います。
ただ、デザインには流行りすたりがあります。今、かっこいいと思っているものが、10年後、20年後も同じようにかっこいいと感じられるとは限りません。
大切なのは、「人の家がすてきに見えるから」ではなく、「自分の暮らしに、本当に必要かどうか」で考えることです。
もちろん、お金に余裕があるなら、こだわりのデザインを取り入れるのも良い選択です。将来、家を売る予定があるなら、それは資産価値を高めるための投資として割り切ることもできます。ただしその場合も、「本当に自分に必要なのか」を、一度きちんと自分に問いかけてみることが大切です。
ベランダは、本当に使っていますか
ベランダは、多くの家に「当たり前」のようについています。でも、あらためて聞かれると、何に使っていますか。
洗濯物を干すため、と答える人が多いかもしれません。ですが、今は共働き世帯が多く家事に時間を掛けることができません。なので乾燥機や室内干しを使う家庭がとても増えています。
実は、海外に目を向けても、外に洗濯物を干す国は、それほど多くありません。
中国 黄砂、排気ガスがひどくて外に干せません。
台湾 突然のスコールや、湿気が多く外に干すとなかなか乾きません。
アメリカ 乾燥機がどこの家庭でも必須であるイメージ。
「なんとなく、あるのが普通だから」という理由だけでベランダを造ると、使わないスペースのために、余計なお金がかかってしまうことになります。
ベランダの建築費だけで車1台は買えます!
屋上テラスは、年に何回使いますか
屋上テラスも、憧れる人が多い設備のひとつです。夜空を見たり、バーベキューをしたり——そんな暮らしを想像すると、たしかに魅力的です。
でも、正直に考えてみてください。暑い日に、わざわざ屋上まで上がって何かをするでしょうか。海や景色を眺めたいという明確な目的があるなら別ですが、実際に使うのは、年に数回程度という人がほとんどです。
そのために、階段や手すり、防水工事、雨よけの庇(ひさし)など、数百万円規模の設備投資が必要になります。年に数回のために、それだけのお金をかける価値があるのか、一度立ち止まって考えてみる必要があります。
私は、屋上テラスをつけずに浮いたお金で、家族でリゾートホテルや温泉宿に泊まりに行ったほうが良いと思っています。
吹き抜けは、見た目以上に「暑い」「寒い」
天井が高く、開放的な吹き抜け。写真で見ると、とても素敵に見えます。
しかし、実際に住んでみると、夏は暖かい空気がたまって暑く、冬は上に逃げていく暖かい空気のせいで、下の階が寒くなりがちです。見た目のかっこよさと、住み心地の良さは、必ずしも一致しないのです。
まとめ ― 「足す」よりも「引く」ことが、コスパ最強の家をつくる
収納、デザイン、ベランダ、屋上テラス、吹き抜け。どれも「あったらいいな」と思うものばかりです。でも、ここまで見てきたように、それぞれに共通しているのは、「本当に必要かどうかを、よく考えないまま造ってしまいがちだ」ということです。
こうした設備は、建てるときのお金がかかるだけではありません。ベランダや屋上テラスは防水工事が必要ですし、吹き抜けは冷暖房の効率が下がる分、光熱費もかさみます。つまり、「造りすぎる」ことは、建築費だけでなく、前回お話しした「一生涯のコスト」まで押し上げてしまうのです。
何十件、何百件もの家を見てきたプロの建築士たちが、「造りすぎないほうがいい」と口をそろえるのは、こうした理由からです。
家づくりで大切なのは、「何を足すか」ではなく、「本当に必要なものは何か」を見極め、思いきって「引く」勇気を持つことです。それこそが、初期費用でも、一生涯のコストでも得をする、本当の意味での「コスパ最強の家」につながっていきます。
次回予告 ― 子ども部屋は、本当に必要ですか?
ここまで、「造りすぎない家」というテーマで、収納やベランダ、屋上テラスなど、家のさまざまな設備についてお話ししてきました。実は、同じ考え方があてはまるものが、もうひとつあります。それが「部屋の数」です。
私たちの世代には、兄弟姉妹がいても、1人ひとつの部屋を持っていたという人も多いのではないでしょうか。でも、今は建築資材の値段が大きく上がっていて、家族の人数分だけ部屋を用意しようとすると、建築費がとても大きくなってしまいます。
次回は、「子ども部屋は、本当に必要なのか」というテーマで、建築費のこと、家族にとって本当に必要な部屋とは何か、子どもが実際に家にいる期間はどれくらいか、部屋は何のために使うのかを、一緒に考えていきたいと思います。今の家づくりのヒントになれば嬉しいです。

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