こんにちは。沖縄でRC(鉄筋コンクリート)住宅の設計をしている、大城です。
前回まで、「造りすぎない家」というテーマで、収納やベランダ、屋上テラスなど、家のいろいろな設備についてお話ししてきました。今日はその続きとして、「部屋の数」、特に「子ども部屋」について考えてみたいと思います。
先に断っておくと、私にはまだ大きな子どもがいません。ですから、「これが正解です」と言えるような経験があるわけではありません。今日お話しするのは、あくまで建築士として、これまで見聞きしてきたことをもとに考えたことです。ひとつの意見として、読んでいただけたらうれしいです。
私たちの世代は「1人1部屋」が当たり前だった
私たちの世代には、兄弟姉妹がいても、1人ひとつずつ、自分の部屋を持っていたという人が多いのではないでしょうか。それが当たり前だと思って育った人は多いはずです。
だから、「子どもには個室を」と考えるのは、とても自然なことだと思います。
でも、今は状況が変わってきています。建築資材の値段が、以前と比べてとても高くなっているのです。
子どもの人数分だけきっちり個室を用意しようとすると、どうなるでしょうか。建築費が、とても大きくふくらんでしまいます。
部屋をひとつ増やすと、いくらかかるのか
たとえば4畳半から6畳くらいの部屋をひとつ増やすとします。
床や壁、天井を造るだけでなく、窓、ドア、照明、コンセント、そしてエアコンも必要になります。部屋数が増えるほど、こうした費用がそのまま積み重なっていきます。
さらに、部屋の数が増えるということは、家全体の床面積も大きくなるということです。
床面積が大きくなれば、当然、建築費も上がります。子どもが3人いるからといって、単純に3部屋を用意する。それだけで、想像以上に大きな金額になってしまうのです。
家族にとって、本当に必要な部屋とは
ここで、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。「家族にとって、本当に必要な部屋とは何か」ということです。
子どもに必要なのは、「個室」そのものというよりも、「安心して眠れる場所」「勉強に集中できる場所」「自分だけの時間を持てる場所」ではないでしょうか。
こう考えると、必ずしも「壁で仕切られた、完全に独立した1部屋」である必要はありません。解決できる方法は、ほかにもいろいろありそうです。
たとえば、寝る場所だけは個別に分け、勉強はリビングやダイニングの近くに専用のスペースを作る、という方法もあります。実際、「リビング学習」がお子さんの学力向上につながる、と言われることもあります。個室にこもって勉強するのが、必ずしも一番というわけではないのです。
子どもは、実際に何年その部屋を使うのか
もうひとつ、考えてほしいポイントがあります。それは、「子どもは、実際にその部屋を何年使うのか」ということです。
子どもが「自分の部屋がほしい」と思い始めるのは、早くても小学校高学年から中学生くらいのことが多いのではないでしょうか。そして、高校を卒業したあと、大学進学や就職で家を出ていく子も少なくありません。そう考えると、個室を「本当に必要として使う期間」は、実は10年に満たないことも多いのです。
家は何十年も使うものです。その中のわずか数年のために、大きな金額をかけて完全な個室を人数分用意する。それが本当に得なのかどうか、一度考えてみる価値があると思います。
子ども部屋は、何のための部屋なのか
最後に、そもそも「子ども部屋は何のための部屋なのか」を、あらためて考えてみましょう。
寝るためだけなら、それほど広いスペースは必要ないかもしれません。勉強するためなら、必ずしも個室でなくてもよいかもしれません。友達を呼んで遊ぶなら、どうでしょうか。リビングや、みんなで使える広めの部屋のほうが、向いていることもあります。
「なんとなく、子どもには個室が必要だから」ではなく、「この部屋で、子どもに何をしてほしいのか」を具体的に考えてみましょう。そうすることで、本当に必要な部屋の形が見えてくるはずです。
ちなみに、これは今の私なりの答えです。子ども部屋を頑張って広くするよりも、「友達を呼びたくなるようなリビング」を造るほうが良いのではないかと思っています。
たとえば、広めのリビングに、ハンモックがひとつあるだけでも、小さな子どもにとっては特別な遊び場になります。
中学生になったら、8人くらい座れる大きなダイニングテーブルを囲んで、友達を4、5人呼んで勉強会をする。ジュースやお菓子を出してあげたら、それだけで最高の思い出になるはずです。
高校生になったら、大きなテレビの前で、みんなでスポーツ観戦をしたり、ゲームをしたりする。そんな光景も想像できます。
子ども部屋には、呼べてもせいぜい数人が限界です。
でも、私自身、子どものころ、広いリビングがあるお友達の家がとてもうらやましく、何度も遊びに行きたいと思っていました。だからこそ、個室にお金をかけるよりも、家族みんなが、そして友達も集まれる広いリビングを造りたい。それが、今の私にとっての「ひとつの答え」です。
もちろん、お子さんによっては、どうしても個室が必要になる家庭もあると思います。そのときも、最初から個室として区切ってしまうのは、おすすめしません。まずは広いリビングとして造っておきましょう。必要になったタイミングで、小さく間仕切って部屋を増やす。その順番のほうが良いと考えています。
最初から個室をいくつも用意してしまうと、結果としてリビングが狭くなってしまいます。それよりも、お子さんの様子を見ながら、あとから小分けにできる余力を残しておくこと。それこそが、正解に近いのではないかと思っています。
ちなみに私の計画中の自邸はリビングに全振りの1LDKです。 笑
まとめ ― 正解はまだ、私にもわかりません
今日お話ししたことは、まだ私自身、答えを出しきれていないテーマです。子どもの人数や年齢は、家族によって違います。考え方も違います。だから、必要な部屋の形も、家族ごとに変わってくるはずです。
ただ、これまでの記事と同じように、大切なことがあります。「当たり前だから」「みんなそうしているから」という理由だけで、部屋を増やさないことです。「本当に必要かどうか」を、家族で一度話し合ってみることだと思います。
建築費を抑えながら、家族にとって心地よい部屋の形を見つける。それもまた、一生涯のコストを考えた「コスパ最強の家」への、大切な一歩だと思います。
次回予告 ― 「変えられる家」をつくる、スケルトン・インフィルという考え方
今回、「子ども部屋は、最初から個室に区切らず、まずは広いリビングとして造っておき、あとから間仕切って小分けにする」というお話をしました。実はこの考え方には、建築の世界でちゃんとした名前がついています。それが「スケルトン・インフィル」です。
スケルトンとは、柱や梁、床、外壁といった、家の骨組みとなる構造の部分。インフィルとは、間仕切り壁や内装、設備など、あとから変えられる部分のことです。この2つを分けて考えてみましょう。家族の人数やライフスタイルが変わっても、骨組みはそのままにできます。間取りだけを、自由に変えていくことができるのです。
次回は、この「スケルトン・インフィル」という考え方について、くわしくお話しします。なぜ、将来の変化に強い家づくりにつながるのか。一緒に見ていきましょう。
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