こんにちは。沖縄でRC(鉄筋コンクリート)住宅の設計をしている、大城です。
前回、「平屋に住み替えたくなったら、資産価値の高い建て方をしておいて、思い切って売却してしまえばいい」というお話をしました。6,000万円で建てた家が、20年後に5,000万円で売れたら、実質の住居費は1,000万円、1年あたり50万円で済む。メンテナンス費用等をいれると、そう単純では無いものの、月当たりにすると、4万ちょっとです。今日は、この「資産価値が落ちにくい家」とは、具体的にどんな家なのか、考えていきます。
中古住宅は、建物と土地で価値の考え方が違う
日本の不動産の世界では、中古住宅を評価するとき、「建物」と「土地」を分けて考えるのが一般的です。土地の価値は、周辺の地価が大きく変わらない限り、そう簡単には下がりません。一方で、建物の価値は、年数がたつにつれて、少しずつ下がっていく仕組みになっています。
木造は22年、RCは47年。この差が資産価値に直結する
建物の価値がどれくらいの期間で下がっていくかの目安になるのが、「法定耐用年数」という数字です。これは本来、税金の計算のために国が定めた年数で、「建物が実際に何年住めるか」を示すものではありません。ですが、銀行の融資や、中古住宅の価格の目安として、実際にはよく使われています。
この法定耐用年数は、構造によって大きく違います。
・木造住宅は22年
・鉄骨造は骨組みの厚さによって19年から34年
・鉄筋コンクリート(RC)造は47年です。
木造の家は、築20年を過ぎるころには、帳簿の上では建物の価値がほぼゼロとして扱われることも珍しくありません。
もちろん、これはあくまで会計上の話で、実際にはある調査によると、築20年の木造住宅でも、建物としての価値は当初のおよそ15%ほど残っているとされ、土地の値段が下がりにくいこともあって、土地と建物を合わせた総額では、80%以上の価値が残っているケースも少なくありません。とはいえ、RCは47年という長い年数をかけてゆっくり価値が下がっていくため、木造に比べて、資産価値が落ちにくい傾向にあるのは確かです。
中古で買う人が、長いローンを組めるかどうか
もうひとつ、見落とされがちなポイントがあります。それは、将来、その家を買う人が、住宅ローンを組みやすいかどうかです。
多くの金融機関では、中古住宅への融資期間を、「法定耐用年数から築年数を引いた年数」を目安に決める傾向があります。たとえば、築20年の木造住宅(法定耐用年数22年)であれば、残りはわずか2年ほどしかローンを組めないことになってしまいます。一方、築20年のRC住宅(法定耐用年数47年)であれば、まだ27年ほどローンを組める計算になります。
長いローンが組めるかどうかは、買う人にとって、月々の支払いの負担に直結します。長く借りられる家のほうが、当然、買いたいと思う人も増えます。買い手が多いということは、それだけ売れやすく、価格も落ちにくいということです。ただし、この基準は金融機関によって差があり、必ずこの通りというわけではないことも、あわせてお伝えしておきます。
建物の構造以外にも、資産価値を左右するもの
もちろん、資産価値は建物の構造だけで決まるわけではありません。不動産の専門家がよく挙げるポイントとして、まず何より優先されるのが「立地」です。周辺の地価が安定している、あるいは上がっている土地であれば、建物の価値が下がっても、全体としての資産価値は保たれやすくなります。
次に大切なのが、土地の形が使いやすい形であること、そして接している道路の幅が十分にあることです。道路の幅が足りない土地は、将来、建て替えができない「再建築不可物件」になってしまうことがあり、資産価値が大きく下がる原因になります。そのほか、耐震性能がしっかりしていること、これまでのメンテナンスの記録が残っていることなども、買い手の安心材料になり、資産価値を支える要素になります。
デザインや設備よりも、お金をかけるべきところ
インスタグラムなどでおしゃれな内装を見て、自分の家にも取り入れたくなることがあると思います。高級グレードのキッチンや、最新の住宅設備を入れたくなる気持ちも、よくわかります。お金に十分な余裕があるなら、それも良いと思います。
ですが、新築したばかりのころは、小さな子どもたちを育てていく、生活のための家です。20年もたてば、内装はそれなりに傷みますし、当時こだわった高級キッチンも、そのころには時代遅れの設備になってしまいます。
実際、中古住宅を購入する人の多くは、まず立地を一番に重視し、次に「この建物があと何十年もつか」を見ています。内装は、たいてい後回しです。数年前にリノベーションされていて、間取りが自分に合っていて、内装もきれいだったら「ラッキー」くらいの感覚で見られていることがほとんどだと思います。
つまり、資産価値を重視して家を建てるなら、お金をかけるべきところは、デザインや設備ではありません。20年たっても変わらない、立地、構造、そして外装にこそ、お金をかけるべきだと思います。
中古住宅を選ぶ人は、この10年で増えている
「日本人は新築が好きで、中古はあまり人気がない」というイメージを持っている方も多いかもしれません。ですが、国土交通省の資料によると、中古住宅が選ばれる割合は、この10年で確実に増えています。2013年には全体の30.8%だった既存住宅の流通割合が、2023年には40.4%まで上昇しました。戸建てだけで見ても、22.4%から30.5%まで増えています。
これから先、中古住宅を選ぶ人がさらに増えていくとすれば、「将来、この家は売れるかどうか」という視点は、家を建てる段階で、これまで以上に大切な考え方になっていくはずです。
まとめ ― 「今の満足」と「将来の売りやすさ」を両方考える
家づくりでは、「今、自分たちが満足できるかどうか」に目が向きがちです。ですが、これまでお話ししてきたように、暮らし方は10年、20年という単位で変わっていきます。そのときになって、住み替えたい、売却したいと思っても、資産価値が大きく下がっていては、選べる道が狭くなってしまいます。
立地を選ぶこと。長く価値が続く構造で建てること。将来の買い手が、無理なくローンを組める家にしておくこと。こうした視点を、家を建てる最初の段階から持っておくこと。それもまた、一生涯のコストを抑える「コスパ最強の家」への、大切な一歩だと思います。
次回予告 ― 土地選びで、資産価値の8割が決まる
今回、資産価値を左右するもののうち、いちばん優先されるのは「立地」だというお話をしました。ですが、「立地が大事」と言われても、実際にどんな土地を選べばいいのか、具体的にはまだお話ししていません。
次回は、「土地選びで、資産価値の8割が決まる」というテーマで、用途地域や接道条件、地盤、そして日本特有の地震や災害のリスクまで、土地を選ぶときに実際にチェックしておきたいポイントを、具体的にお話ししていきたいと思います。
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